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011.png瀬田焼「鉄絵近江八景文蜆形蓋物」

Seta ware, Corbicula Shaped Covered box with OMI-HAKKEI(Celebrated Places in OMI) Design, underglaze iron

瀬田(門平)焼/Seta (Monpei) ware
明治ー昭和時代/19th-20th Century
高(H)6.0 (蓋なし2.1) × 幅(W)23.2 × 奥(D)22.2
滋賀県立陶芸の森陶芸館/The Museum of Contemporary Ceramic Art, The Shigaraki Ceramic Cultural Park
瀬田(門平)

 

近江八景のひとつ「勢多(瀬田)の夕照」で親しまれてきた、栗太郡勢田村(現・大津市瀬田)で焼造されたやきもの。初代池田門平が、幕末から明治初年頃に唐橋周辺の瀬田川東畔で、楽焼の茶碗づくりを手掛けたのがはじまりという。「瀬田焼」若しくは「門平焼」と呼ばれ、ほかにも「せ多」や「せた」、「夕照山」などの銘が知られる。伝世品は飯碗や酒器など普段使いの日用品から、茶碗や水指に花器など茶陶まで幅広く、近江八景や大津絵など地元の風物を、意匠にした趣のある作風も数多く、往来の人々に旅土産として、作られていたようである。

鉄絵近江八景文蜆形蓋物

印刻銘「せた」

本作は、遊び心が随所に感じられる作品である。名物の蜆(しじみ)がリアルに表現された蓋を開ければ、瀬田川を見下ろす石山寺の月見亭と夜空に浮かぶ月が描かれている(「石山秋月」)。そして、もう一方には、瀬田川に掛かる唐橋に沈む夕日を描かれている(「瀬田の夕照」)。この蓋物を前に人々は、近江の情景に思いを馳せ、心癒やされたのではないだろうか。また、本作を含めた瀬田(門平)焼は、地元大津に因んだ題材を描いた、素朴で穏やかな作風が大きいな特徴と言えよう。