石黒香香「相撲人形」
Figurine, Made by Ishiguro Koko
明治時代/1869-1912 | |
高(H)14.8cm、口径(MD)30.7×7.6cm、胴径(D)46.7×12.1cm、 底径(BD)22.4×5.3cm | |
銘 「石黒香香」「紀念浅草国技館」 |
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田邉哲人コレクション/Tetsuro Tanabe Collection | |
石黒香香
(生没年不明) |
石黒香香は、隅田焼の陶工として伝えられるが、万国や内国博での出品歴や、明治期の陶工の記録でも確認ができず、経歴た活動期間などの詳細は不明である。明治期の浅草周辺は東京絵付・東京焼の一大産地であり、隅田川沿の浅草橋場町には、井上良斎窯を代表とする隅田焼が輸出用の陶磁器を主に生産していた。石黒は、良斎作品と類似した高浮彫や人形といった立体的な作品を制作し、外国人から好評を得たようだ。輸出品であったため、海外からの里帰り品によってのみ存在を知ることができるが、当時東京焼の発展を支えた陶工であろう。(展示図録119頁より転載・加筆) |
相撲人形 |
本作は、日本書記が記す神代の力士を造形化した作品。強力を誇る当麻蹶速と垂仁天皇の命により出雲国より召喚された出雲の野見宿禰が相撲をし、互いに蹴り合った末に、宿禰が蹶速の腰を踏み折って勝利した。これにより宿禰は天皇により「士師巨」の姓を与えられ、代々天皇の葬儀を司ることとなった。実はこの士師氏は土から埴輪を作った氏族ともされており、陶工の祖先として崇められている。おそらく本作は日本の陶工の先達祖・野見宿禰を称えるフィギュアであった可能性も考えられる。(展示図録120頁より転載) |